派遣社員に悩みや秘密を打ち明ける理由

私は約8年間、派遣社員として様々な企業で就業してきました。そこでは、たくさんの正社員の方との出会いがありましたが、正社員の方から、悩み事を相談されたり、秘密話を打ち明けられたりしたことが何度もありました。特に、20代後半に就業した長期の仕事の時が、最も頻度が高かったです。

その時の仕事内容は、商品開発部のアシスタント業務です。資料作成、データ集計、電話対応、庶務、雑務、なんでもやりました。所属は商品開発部ですが、仕事上、営業部や、経理部などの人と関わる事も多かったです。フロア内には、正社員、派遣社員合わせて50人程いましたが、殆ど全員と、何かしら仕事上の関りがありました。

就業し始めた当時、私は27歳。比較的平均年齢の若い会社で、私より若い人、同年代、ちょっと上の世代が殆どで、30代後半以上になると、課長以上の役職を持っている方ばかりの職場でした。私は誰かと特別親しくしていたわけではなく、基本的には仕事をきっちりと行い、それをスムーズにするために、報告、連絡、相談を欠かさないようにしていました。

お昼休みのランチは、打ち合わせや外勤の人も多く、12時から1時間という規定はありましたが、その時間通りとれる人は少なく、皆自分のペースで、昼食は食べれる時に食べる形をとっていたのですが、誰かとベッタリではなかった私は、色々な人から、たまにですが、ランチのお誘いの声がかかりました。そんな時に、悩み事を相談されるのです。

恋愛話もありましたが、一番多かったのは、「正社員を辞めようと思うことがある」という話でした。私よりちょっと上の、30歳前後の女性社員数名から、同じような相談をされました。そして、口をそろえて「派遣社員ってどんな感じ?」と聞くのです。きっと、本気で辞めようかどうか悩んでいるわけではないと思います。ただ、1つの会社で長く働いていると、その仕事が心から好きだったり、すごく充実した毎日で満足していたりしなければ、誰だって、ふと、「会社を辞めたらどうなるだろう」と考えることがあると思うのです。そんな時に、自由に自分のスキルを活かして職場を選んでいる(ように見える)、年の近い派遣社員がいたら、そういった道を選んだら、どうなるだろうと、考えることがあっても不思議はないですよね。

私としては、紆余曲折あって、結果的に、派遣社員が性に合っていたというだけなのですが、時に、しがらみのない派遣社員が羨ましくなる瞬間があるのかもしれません。この相談を受けた時は、「辞めるなんて勿体ないです」と心から言っていました。1つの会社で長く働いて築き上げたものは、派遣社員では絶対に得られないものです。

派遣社員は、確かに自分で職場を選べる自由度がありますし、基本的にその会社にずっといるわけではないという、気楽さがあるのは確かですが、それと同時に、次の職場が本当にあるかはわからないという不安と、新しい職場に行く度に、その会社に自分を合わせるストレスがかかってきます。正社員に比べて、生涯年収の格差や、ボーナスの有無に差があることは言うまでもありません。そういったことを、角がたたないように、相談相手に伝えていました。

こういった悩み事の他にも、部署内の恋愛話や、過去、誰かがやらかしてしまった大失態の話などを、たくさんの人から「ここだけの話」と打ち明けられました。皆、うわさ話や秘密、悩みや泣き言を、誰かに言いたくなるものですよね。それを打ち明ける相手に、なぜ派遣社員の私を選ぶのかと言うと、これは、単なる私の個人的な考えなのですが、私が派遣社員という、外部の存在だからだと思うのです。

正社員同士は、この先もずっと関係が続きます。だからこそ、すごく親しくもなりますが、言葉を選ぶ関係にもなるのです。噂や内緒話を正社員同士で打ち明けて、何かの拍子に「あの人口が軽い」と言われてしまう事態になるかもしれません。悩み事や泣き言を、同じ環境下でずっと働いている正社員に打ち明けることは、プライドが許さないのかもしれません。自分がずっと務めている会社以外の世界を知る派遣社員の意見を、聞いてみたくなる瞬間があるのかもしれません。当時の私の27歳という、その部署の中では真ん中の年齢だったというのも大きな理由の1つかもしれません。仕事をしっかりやることを優先し、つるまないタイプに見えていたからこそ、話しやすかったのかもしれません。きっと、あの会社の正社員にとって、派遣社員の私は、ちょっとした吐き出し口のような存在だったのかな、そんなことを思います。私は元々、自分の話をするより、人の話を聞く方が好きです。私に話すことで、少し心が軽くなるなら、いくらでも聞きたいと思います。

このように、たくさんの人と出会い、色々な話を聞けることは、派遣社員の醍醐味の1つでもあります派遣社員だからこそ見える、正社員の姿があるのです。